表現がすごい。男が何のためか分からない「列」に並んでいる所から物語が始まり、人間社会を列に見立てた話が進んでいく。
例えば、行列に並んでいると前の人を羨み、後ろの人に優越感を抱いたりする。他者と比較し、自らの利益のために争う「人間社会の醜い部分」を「列」を使って上手に表現している。
社会の中での自分の順位を気にする性質は、古来よりある人間の本能だからなくすことはできない。でも、人間社会特有の何かの特殊性によって、人の醜い部分が強調されているのかもしれない。
過度の欲望を持たない、競わない、と人間が意識しても、社会で生活する限り、無意識への刺激は避けられないのではないだろうか。競わないと決めても、自己肯定の感覚が、気だるく下がっていきはしないだろうか。掴みどころのない、透明な不満が内面に漂う。 p92
理解できなかった部分も多く抽象的な言葉になってしまうが、その特殊性はなんなのか、考えながら面白く読めた。