坂本龍一さんの自伝を読んだ

こんばんは。今日はこちらの本読み終えたので、感想を書いていきます。

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正直坂本龍一さんのことは、著名な音楽家で今年亡くなった、ということくらいしか知らなかった。本屋で見かけた時に、表紙が綺麗だなと思い読んでみた。

結果大正解。とても面白かった。

 

内容は、幼少期から2009年頃までをざっくりと振り返ったものになっている。読んでてまず思ったのは、ものの伝え方が上手だなということ

自分は音楽の知識皆無だし、昭和はまだ生まれてないからその時代の雰囲気を知らない。それでも、すらすらと読めた。「表現」という意味では、音楽も言語も一緒なのだろう。そんな話も冒頭に登場する。

表現というのは結局、他者が理解できる形、他者と共有できるような形でないと成立しないものです。だからどうしても、抽象化というか、共同化というか、そういう過程が必要になる。すると、個的な体験、痛みや喜びは抜け落ちていかざるを得ない。そこには絶対的な限界があり、どうにもならない欠損感がある。でも、そういう限界と引き換えに、まったく別の国、別の世界の人が一緒に同じように理解できる何かへの通路ができる。言語も、音楽も、文化も、そういうものなんじゃないかと思います。 ーP22

 

軽く内容に触れていくと、学生時代あたりは何をするにしても行動の動機が「かっこいい」「モテたい」だった。それがユーモアたっぷりに話されていて楽しく読めた。

仕事として音楽をやるようになっていくと、内容がより深くなる。著者の元来の才能もあるが、様々な音楽、文化、社会問題に触れ、影響を受けながら、多くの楽曲が出来上がったことが分かる。そういう外的要因を、一緒に追体験できるのも面白かった。

終盤は、環境問題への取り組みや、今後の音楽等についても触れられている。穏やかな著者の語り口とは裏腹に、本当にその人生は華やかで狂騒に満ちていた。

 

今年訃報のニュースを聞いた時は、有名な人が亡くなったんだなとしか思えなかった。今は素直に、お疲れ様でしたと思う。

文中に、YMO再々結成にあたって「年を取ってよかった」という言葉がある。自分もそんなことを思える人生にできたらなと思った。

若いころはいろいろとうまくいかなかったけれど、年を取ったからこそ、また2人と一緒に音楽ができるようになった、ということかも知れない。だとしたら、年を取ってよかったと思います。ポール・二ザンじゃないですが、若さなんて、全然いいものじゃないんですよ。声を大にして言いたい。 ーP310